2011/05/29

トピック:イギリスはアマチュア考古遺物収集家のパラダイス

イギリス・サフォークで発見された金貨(credit: Reuters/PAS)
イギリスでは、重要な考古遺物の登録件数が急増している。

2010年にはイギリス内で9万以上の考古遺物が博物館に記録された。
これは2009年の登録件数から36%増加したことになる。
その背景にはPortable Antiquities Scheme(PAS)という政府による計画があった。

Portable Antiquities Scheme(PAS)とは、「持ち運びできる考古遺物に関する取り決め」のことで、急増する一般人が発見した小さな文化財を記録するために、イギリス政府が運営しているボランティア計画である。
この計画は1997年に開始されたもので、イングランドとウェールズで実施されている。

この計画は主に金属探知を趣味で行っている個人を対象としたもの。個人で発見した遺物については、公的に記録されないことがこれまで多かった。
1996年にはTreasure Act(財宝に関する法令)が施行されているが、貴金属や、先史時代の卑金属、およびそれらと一緒に発見された遺物群を主に対象している。
先史時代のものではない卑金属や、非金属の遺物に関してはTreasure Actでは扱われず、記録されないことになる。
PASはこのギャップを埋めるための計画である。

この計画によって、しばしば歴史的にも重要な価値を持つ財宝を国が保護し、ブラックマーケットへ秘密裏に売却されることを防いでいるという。

遺物は農地から発見されたものから、川から見つかったものもあり、先史時代の石鏃からローマ時代のブローチ、アングロ・サクソンのストラップ飾り、中世のコイン、近代の入れ歯まで、様々である。

そのハイライトが大英博物館に展示されている。
例えば、後期鉄器時代の金貨が展示されている。「ステイター」と呼ばれる種類で、紀元後15~20年のものであり、全部で840枚のコインがまとまって発見された。
南東イングランドのアマチュアの金属探知家が発見したもので、イギリスでまとまった形で発見されたのは1849年以後最大の量である。

一方で、こうしたアマチュアによる遺物の収集は、写真の撮影や発掘現場の記録が十分なされず、学術的ではないとして専門の考古学者に冷笑されていることもあった。
確かに、発掘調査は科学的な方法によって行われ、遺構・遺物の出土状況からわかることも多い。
アマチュアによる発掘はそういった情報が適切に残されることは少ないので、出土状況などは完全に失われてしまうこともある。

PASの代表Michael Lewis氏は、この計画が他のヨーロッパ地域で行われている厳格な発掘調査とは一線を画すことを強調している。
「多くの国では一般人による発掘は禁じられており、保有することさえできない」

この計画を称賛する声も多い。
この計画に関与している大英博物館長の館長Neil MacGgregor氏は「なによりすばらしいのは、これらの遺物の発見が考古学者ではなく一般人によって行われたことであり、イギリスの考古学マップを変えていくことになるだろう」と語っている。

Britain: An amateur treasure-seeker's paradise
写真の引用元も上記リンク先

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