2011/05/10

年輪がエル・ニーニョの1100年の歴史を解き明かす

太平洋東部の熱帯の高温期であるエル・ニーニョ現象とその正反対である低温期のラニーニャ現象は、世界の気象に重大な影響を与えていることがこれまでに知られてきた。

数か月先のエル・ニーニョ現象の様子を予測することは現在では当たり前になっているが、長期的な観測記録が不足しているため、地球温暖化のなかでどう変化していくかは予測できていない。

しかし、気象科学の専門家による国際的なチームによって、北アメリカ、特にアメリカ合衆国南西部の木の年輪から、過去1100年にわたるエルニーニョ現象の強度を表していることが明らかにされた。
これによって、エル・ニーニョ現象の長期的な予測を改善させることが期待できるという。
研究チームの主任はマノアにあるハワイ大学の国際太平洋研究センター(International Pacific Research Center)のJinbao Li氏。

強いエルニーニョが観測された1997年12月の海面温度
エル・ニーニョ現象では、太平洋東部の海水面の温度が異常に高い場合に大気の循環に変化が生じ、アメリカ合衆国南西部の冬が異常に寒くなる。その場合、年輪はより幅が広くなる。
逆のラ・ニーニャ現象では、太平洋東部の海水面が異常に低い場合に、乾燥化が起き、年輪の幅は狭くなる。

年輪の記録は、既存のエル・ニーニョ南方振動の復元モデルと一致しており、太平洋中央部のパルミラ環礁にある現生のサンゴと何百年も前に生きていたサンゴに含まれる酸素同位体比(δ18O)とも高い一致を示している。

サンゴによるエル・ニーニョ現象の記録は大きな流れしか見ることができないが、年輪は1100年間の一貫した詳細なエル・ニーニョの記録を提供してくれるとLi氏は述べている。

年輪による研究結果から、エル・ニーニョの極めて変動しやすい性質が浮き彫りになった。エル・ニーニョ現象が強く働く期間が数十年続き、弱く働く期間が数十年続く。
エル・ニーニョ現象の最も弱かった時期は11世紀中世の異常気象であり、最も強いのは18世紀以降である。

こうしたエル・ニーニョ現象の強度の異なる期間は太平洋の長期的な気候変化と関係がある。ガラパゴス諸島、ユカタン半島北部、太平洋北西部のボーリング調査では、太平洋中央部東部の熱帯地域の気候が高温期と低温期を繰り返しており、それぞれの期間は50年から90年の幅があることが判った。

高温期にはエル・ニーニョ現象とラ・ニーニャ現象の働きは通常よりも強くなる。一方低温期では、長期間の平均を大きく逸脱はしない。
例えば、中世の異常気象の時期には、太平洋東部の熱帯域は気温が低かった。

エル・ニーニョ現象は世界中の異常気象を引き起こすため、地球温暖化の中でどのような変化が起きるかを知ることは重要な課題となる。
年輪によるデータは、気候のモデルと予測を評価し、より完全なものへとするためのベンチマークとなる、と研究チームのShang-Ping Xie氏は述べている。

Tree Rings Tell a 1100-Year History of El Niño

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