2012/03/24

最新の研究成果で浮かび上がってきた古代ケルト人像

近年のドイツにおける調査の成果によって、古代のケルト人の姿がより鮮明に浮かび上がってきた。

ウィスコンシン大学ミルウォーキー校の人類学教授Bettina Arnold氏は10年以上に渡ってドイツのバーデン=ヴュルテンベルク州にあるホイネブルク丘上集落の発掘を行ってきた。
ここにある2600年前の2基のケルト人墳墓から、装飾品や酒器を含む遺物が発見された。
墓から発見された杯やその他の輸入品から、ヨーロッパ中央部のケルト人は地中海岸の人々と交易を行っていたことが分かってきた。

ビールは蛮族の飲み物だが、ワインはエリートのための飲み物だった。
当時ブドウは中央ヨーロッパにはもたらされていなかったため、輸入されたワインを得ることができたのは地位の高い者たちだった。
ケルト人も蜂蜜をベースにハーブや花で香り付けをした酒を作っており、ビールよりは高価だったが、ブドウのワインほどではなかった。

ケルト人は小麦もしくは大麦で、ホップを使わないエールも作っており、蜂蜜酒と混ぜるか、またはそのまま飲んでいた。
しかし貯蔵ができず、すぐに消費しなければいけなかった。

上流階級では、アルコール類をたくさん摂取することが、質の良いものを飲むのと同じくらい重要だった。
Arnold氏はアルコール飲料をサーブするための完全な大釜を、ホイネブルクの墓の1つから発見した。
もっとも、1970年にホッホドルフの近くで発見された族長の墓には杯として使用された9つの角が出土しており、そのうちの1つは10パイント(約5リットル)の容量があったという。

ケルト人はアルコール好きで知られるだけでなく、派手な装飾ときらびやかなストライプもしくはチェックの衣装を身にまとっていたと古代ギリシア、ローマの人々は語っている。
衣服や皮は遺物としては残りにくいため、この話が本当だったかどうかを調べることが難しかった。

ホイネブルクの埋葬ではこれらが残っていた。
一方で、酸性の土壌であったため、骨は残っていなかった。
Arnold氏らは、新たな技術を用いて衣服や装飾品の復元を行っている。

Arnold氏ら、ヘアピンや宝石、武器、衣服の留め具などの、もろい金属製品を取り上げることはせずに、遺物を含んだ状態で底のブロックを石膏で固めてしまい、密封してCTスキャンをかけた。

その結果、位の高い女性が身に受ける皮のベルトが発見された。
ベルトは何千もの青銅の留め具で作られており、作るのには長い時間がかかっただろうとArnold氏は述べている。
CTスキャンによる調査は埋葬時の衣服の状況を細部まで明らかにできるだけでなく、また、衣服から被葬者の性別や、大人か子どもか、既婚者か、社会の中で重要な地位を得ていたかどうかなどを知る手掛かりにもなるという。

例えば、女性の頭のヴェールを留めていたピンの存在は、被葬者が既婚者であり、おそらくは子どもがいたことを示している。
左手に腕輪をしているのは男性であり、両腕に腕輪をし、首飾りをつけているのは女性の墓でしか見られない。

亜麻布や毛糸に接していた金属製品は特に重要な遺物として扱われる。
金属に付着している微細な繊維を顕微鏡で調べることで、衣服の色や模様を復元する手掛かりになるのだ。

Beer and Bling in Iron Age Europe


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