2011/04/13

初期キリスト教の「鉛文書」 偽物の可能性が指摘される

70におよぶ金属製の本がヨルダンの洞窟から発見されており、キリスト教に関する最初期の文書として注目を浴びている。
キリストの死の約10年後に書かれたとされている。研究者達は「鉛文書」と呼び、歴史上最も重要な発見としてもてはやし、主要メディアが「鉛文書」研究の成果を報道して過熱気味になっている。


しかし、鉛で鋳造されたクレジットカードサイズの板が、鉛のリングによってつなぎあわされたこの「鉛文書」について、その信ぴょう性に対する疑問が徐々に沸き起こってきている。
現在、あるアラム語の翻訳者は文書の分析を終え、これが偽物であるという動かし難い証拠を発見したと述べている。



混合されたメッセージ
「古いアラム語の書体は少なくとも2500年前のものだ。しかしより新しいものが混じっていたので、詳細に文字を検討し、全ての異なる書体を取り出してみた」と、アラム後のプロの翻訳者 Steve Caruso氏は語っている。「とても奇妙なもので、このような混合はこれまでに見たことがない」

彼が特定した書体で、最も新しいものはナバテア文字とパルミラ文字によるもので紀元後2世紀から3世紀にあたり、キリスト教の黎明期に書かれたものではない可能性を示している。

分析によると、最も古い書体でさえ、意味のわかっていない人物が書いているという。「書き順に統一が見られない。書き手はきわめて特徴的な書き方をしている」とCaruso氏。さらに、いくつかの文字は反転してしまっている。こうした間違いは、オリジナルのものではなく、急いで真似たものである可能性が高い。

Caruso氏の分析結果は、オックスフォードのギリシア人考古学者による近年の発見からも裏付けられている。この人物によれば、十字架とキリストの姿など、文書に現れる図が、時代錯誤的なものであるというのである。「キリストとされている図は、実際にはロードス島のコインに描かれた太陽神ヘリオスだった。その他にもヘブライ語やギリシア語による意味不明の文があった」とPeter Thonemann氏は述べている。彼はこの文書がここ50年の間に偽造されたものと信じて疑わないと言っている。

David Elkington氏はこの文書が本物であると信じている研究者で、古代の宗教考古学者としてBBCの取材に答えている。Elkington氏は、イスラエルに密輸されてしまった文書ヨルダン政府が回収できるよう尽力している。

Elkington氏とそのチームは文書が神と共にあるイエスのイメージとイエルサレムの地図を表しており、メシアの到来について書かれていると主張している。さらに彼らは、文書が初期キリスト教の避難者達が野営していた場所の近くで発見されたと言っている。

このチームは「私は立ちあがって歩いた」と読める断片を特定しており、イエスの復活を表している可能性を指摘している。

しかしながら、Elkington氏の説の信頼性は、十分に検証されたものではないようである。「Elkington氏は文書を実際に見ることができるごく限られた人物の内の一人であるが、考古学者ではない」とペンシルヴァニア大学のギリシア・ローマ時代の考古学者Kimberley Bowes氏は述べていた。

Bowes氏によれば、「彼は何らかの職や学術的な職位を有しているようではないし、音響共振がどのように世界の主要な宗教に影響しているかについて彼が書いた説は、私が知っているどの学会や学者にも受け入れられていない」とのこと。

Caruso氏も、なぜElkington氏の説がここまでマスコミに取り上げられているのか、わからないと言っている。「メディアは記事として取り上げる前にまともな調査をしていない。」

「いいタイミングだっただけ」
おそらく、良い写真と良いタイミングがこの問題を加速させたのだろう。「本当にいい写真がいっぱいあって、見た目は全ての内容が納得のいくもののように見えるのだろう。人々はイースターの時期に書くべき記事を探し求めていたのであり、文書のニュースは大きな反響を呼ぶことが予想できた。

Bowes氏によると、キリスト教関連の偽遺物は比較的良くあることだという。「人々はキリスト教の最初の2世紀の物質的証拠を、実際の証拠よりも強く求めている。これは、当時のキリスト教徒がきわめて小さな集団で、紀元後100年にはせいぜい7000人だったこと、そしてユダヤ教の同業者と自分たちを物理的に区別することができなかったことが原因である」

Caruso氏も日頃遺物の分析を頼まれるそうである。「実際、でたらめなもの、偽物は本物より多い。悲しいことだ」と語った。

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