2011/08/29

古代エジプト人はヘア・ジェルのようなものを使っていた ミイラの頭髪の分析結果

古代エジプト人は脂肪を用いた整髪料を使って髪を整えていたことが、ミイラの分析から判明した。
生前・死後も髪型を維持するために、ヘア・ジェルのようなものを使っていたのである。
王家の谷35号墓から発見された女性のミイラ

イギリス・マンチェスター大学でミイラの研究をしているNatalie McCreesh氏らは18のミイラから髪のサンプルを取得して分析した。
もっとも古いものでは3500年前のものだが、大半は西部砂漠のダクラ・オアシスの墓地から発掘された、ギリシャ・ローマ時代のものである。
年齢は4~58歳で、男性・女性のものがある。
いつくかは人工的にミイラ化が行われているが、そのほかは砂に埋められたことで自然に保存されていた。

光学顕微鏡と電子顕微鏡を用いた調査で、ミイラの内の9体の髪は謎の脂肪分によってコーティングされていた。
ガスクロマトグラフィー質量分析法を用いて、サンプルの分子ごとに分離した結果、パルミチン酸やステアリン酸などの長鎖脂肪酸が含まれていることが分かった。
この分析結果は「Journal of Archaeological Science」に掲載される。

McCreesh氏は、脂肪によるコーティングが髪を整えるために使われた、整髪料と考えている。
この脂肪は自然にできたミイラにも、人工的にミイラ化されたものからも発見されていることから、この整髪料が生きている時だけでなく、死後のミイラ化のプロセスでも重要な美容品であったとMcCreesh氏は結論づけている。

人工的なミイラ化に用いられるレジンや防腐処理用の材料は、髪のサンプルからは発見されなかった。
このことは、髪は防腐処理の際は保護されており、その後に整髪した可能性を示唆している。

「おそらく、古代エジプト人は自分の髪に対して特別な注意を払っていたのだろう」とMcCreeshは述べている。
整髪料は男性・女性の両方のミイラから発見されていることから、男も女も永遠の整髪に注意を払っていたと考えられる。

大英博物館のエジプトミイラコレクションを管理しているJohn Taylor氏は、この説は有り得るとしている。
「髪型はステータスを示すシンボルだった」と彼は述べている。
洗練されたスタイルはその人物の位の高さを示すのだ。

古代エジプトの文字資料や壁画には整髪に関する言及は見当たらない、とTaylor氏は述べている。
一方で、香料の入ったオイルやローションを体に塗っていたことは知られている。

「最も重要なカギは、古代エジプトの鬘にある」とTaylor氏。
「鬘の髪はしばしば蜜蝋でコーティングされている」
このような鬘は古代エジプトの墓で発見されており、高価で貴族達だけに限られていた、と McCreesh氏は述べている。

古代エジプト人は蜜蝋を自分の髪に塗っていたことも考えられる。
蜜蝋にはパルミチン酸などの脂肪酸が含まれいてるが、 McCreesh氏の研究では今のところ蜜蝋であることを示す証拠は見つかっていない。
「脂肪であることはわかるが、どのタイプの脂肪であるかがわからない」

McCreesh氏は、蜜蝋の場合、動物性の脂肪に比べて洗い流すことが難しいだろうと指摘している。
彼女は現在、ヘア・ジェルの調合を突き止めようとしているそうだ。

ミイラのヘアスタイルは様々であり、長髪もあれば短髪もあって、巻き髪がとりわけポピュラーだ。
巻き髪用のトングに似た遺物がいくつかの墓から発見されている。
ヘアスタイルを整えたら、脂肪による整髪料によって巻き髪を固定していたようだ。

Ancient Egyptians used 'hair gel'


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