2011/08/02

世界最古の分度器? 古代エジプトの建築家の副葬品

Credit: New Scientist
写真にある奇妙な遺物は、古代エジプトの建築家の墓から発見されたものだ。
100年間に渡って、エジプト学者はその用途について議論してきた。

1人の物理学者がその議論に参戦した。
トリノ技術専門学校のAmelia Sparavignaという人物であり、彼女は、この遺物が世界で知られている最古の「分度器」という説を唱えている。

この説は、遺物の表面に刻まれた彫刻の解釈に基づいている。

被葬者のカーという人物は、紀元前1400年頃のエジプト新王国時代第18王朝で、王の墓を建設にかかわっていた。
彼の墓は1906年に考古学者Ernesto Schiaparelliによって、ルクソールにある王家の谷の近く、デル・アル=メディーナという遺跡で発見された。
カーの副葬品にはキュービット尺(古代の長さの単位による物差し)、現代の勾配を図るための三角定規に似た水準儀、そして奇妙な形で中が空洞になった木製の箱と思われるものが含まれていた。

Schiaparelliはこの最後の遺物が、別の水準儀を入れるためのものと考えた。
現在この遺物はイタリアのトリノ博物館に展示されているが、水準儀の箱として表示されている。

しかし、Amelia Sparavigna氏は、これは別の建築用具で、分度器だと主張している。
鍵となるのは、遺物に施された彫刻にあるバラの花形の図で、16の等間隔の花弁と、その周りにジグザグ文様が刻まれており、角が36ある。

この遺物の直線状になっている部分を傾斜している面におけば、下げ振り(糸の先に重りをつけて垂直のラインを示すもの)を使うことで、彫刻で傾斜の角度がわかる、というわけである。

16分の1という分数は、エジプトの算法として用いられていたものであり、またデカンと呼ばれる36の星をエジプト人は特定しており、それが後の星時計の元となった。
Sparavigna氏は、この遺物が「2つの数値に基づいた分度器であり、1つは分数、、もう1つはデカンが基準になっていた」と主張している。

しかし、古代エジプトの建築が専門のケンブリッジ大学の考古学者Kate Spence氏は、単純に彫刻が施された箱であるという説を維持している。
Spence氏によれば、問題となっている彫刻は他の計測器具と比べて、特に精確といういわけではない。
「もしエジプト人が精確に作ろうと思えば、彼らにはできたはずだ」とSpence氏。
古代エジプト人は長方形の両端を計測することで角度を求めていたようであり、カーの副葬品と同じ遺物はこれまでのところ知られていない、とSpence氏は述べている。

Egyptian tomb mystery may be world's first protractor

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