2011/06/21

古代ローマ建築の方位と天文との関連 ヴィッラ・アドリアーナ(イタリア)

ヴィッラ・アドリアーナの風景(大浴場)
ヴィッラ・アドリアーナは古代ローマ帝国のハドリアヌス帝によって建設された広大な別荘地。
イタリアのローマから東へ約30kmのところにあるティボリに位置している。
紀元後118年に建設に着手し、133年に完成したと言われている。
1999年にはユネスコの世界遺産にも登録されている。

ヴィッラ・アドリアーナに30以上あるハドリアヌス帝の建築物の方位は、特に規則はなく、ランダムに配置されていたと長年考えられていた。
しかし、イタリアの考古学者Marina De Franceschini氏によれば、2つの建物で夏至の時に細い光が貫通するという。


ロッカブルーナ(左が入口、右が反対側の窪み)
1つはロッカブルーナ(Roccabruna)で、夏至の時にドアの上にある楔形の穴から光が差し込み、反対側にある窪みを照らすという。
またアッカデミアの建築物にある神殿では、夏至と冬至の時だけ太陽の光が一連のドアを通っていくという。

2つの建物は道によって繋がれており、この道は夏至と冬至の時は聖なる通りとなる。
宗教的儀式を記述した史料と発見された彫像の研究から、De Franceschini氏は、このような光の効果が、エジプトの女神イシスに関連する宗教的な行事に関連していたと考えている。
イシス信仰は古代ローマでも取り入れられていた。

ニュージーランド・オタゴ大学の古典学者Robert Hannah氏も、この説を支持している。
Hannah氏は、ローマのパンテオンがカレンダーの機能を有する巨大な日時計と考えており、頂部にあるドームの円形窓によって、春分と秋分、および4月21日にドーム内部の床の特別な点に光があたるように設計されている。4月21日は、町の誕生日にあたる。

歴史時代の建造物と、天文的な一致を研究した例は少ないとHannah氏は述べている。
先史時代の遺跡は、例えばストーンヘンジのように、他に多くの遺構・遺物があるわけではないので、一致をチェックしやすいが、歴史時代のものは複雑になってしまう、ということが背景にあるようだ。

De Franceschini氏は次の夏至にヴィッラ・アドリアーナの光を記録すべく、滞在する予定だという。「昨年の夏至は雨だったので、今年はもっといい写真が撮れるのではと期待している」


Hadrian's buildings catch the Sun



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