2011/06/05

人類の祖先に見られる行動パターンの性別差 理化学的分析による研究成果

アウストラロピテクス・アフリカヌスの頭骨
これまでに、初期のヒト亜科(2足歩行をし、比較的小さな歯と大きな頭脳を持つ、ヒトやチンパンジーおよびその祖先を指す)の行動範囲と居住パターンは形態学や石器の調達先、現生の霊長類、系統発生学などから推測されてきた。

ドイツ・ライプツィヒのMax Planck進化人類学研究所の研究チームは、南アフリカのアウストラロ・ピテクスとパラントロプス・ロブストゥスの化石に対して、ストロンチウムの同位体による分析から、行動範囲の分析を実施した。

この方法によって、歯が石化している時期に動物が生息していた範囲を特定できるという。

研究チームによると、高い割合で小型のヒト亜科の歯には見つかった地域とは異なるストロンチウムの同位体が含まれていた。
初期のヒト亜科は性別による形態の差異が大きいことから、小さい歯はメスのものであり、メスはオスよりも自分が生まれた集団から離れやすかったということを示している。
これはチンパンジーやボノボそして多くの人間の集団の離散パターンと同様であり、ゴリラやその他の霊長類の大半とは異なる結果である。

古生物学や考古学の方法では、初期のヒト亜科の行動パターンについて具体的な証拠はほとんど提供できない。
例えば、居住範囲は大雑把な体重から推測しており、初期のヒト亜科の離散モデルは人間に似ていて、人類と同じ祖先を持つ動物に共通する行動パターンに依拠している。
こうした復元は極めて不正確な要素を含んでおり、初期人類の生態、社会構造、進化に関する理解への妨げになっていた。

ストロンチウムの同位体分析は歯のエナメル質を対象とする。
ストロンチウムは哺乳類に摂取された時にに、わずかな痕跡が歯に包含される。

研究チームは最初に、化石が発見された洞窟から半径50kmにある植物からストロンチウムの同位体を取り出し、その地域で摂取可能なストロンチウムを決定する。
歯のエナメルの分析にはLA-MC-ICP-MS(laser ablation multicollector inductively coupled plasma mass spectrometry)と呼ばれる方法を用いた。この方法は非破壊に近く、エナメル質の表面にわずかな痕跡が残るだけである。

研究チームは、パラントロプス・ロブストゥスとアウストラロピテクス・アフリカヌスに含まれる他の地域で生まれた個体の割合については、大きな差が見られなかったことを明らかにした(前者は36%、後者は25%だった)。
一方で、歯のサイズ、つまり性差で顕著な差がでたのである。

ストロンチウムの同位体は歯の石化が進む成体になる前に入り込んだものであり、ヒト亜科はこのような時期は母親と行動をともにしていたと考えられることから、分析結果は成体のオスとメスの行動範囲の違いを示しているのではない。
むいろ、メスの方が自分の居住グループから離れていくことが多いということを示しているのである。

メスが離散するパターンをとるのは、チンパンジーやボノボそして多くの人間の集団の離散パターンと同じであり、ゴリラやその他の霊長類の大半とは異なることは先に触れた。
このことは、初期のヒト亜科の社会構造が、ゴリラに見られるような少数のオスがメスのグループを従えるものとは異なっていたことを示している。

外から移住してきた大型の個体が少ないことは、オスの行動範囲が狭かったことを示している。
また研究結果から、アウストラロピテクスがドロマイト(白雲岩)の取れる土地を好んでいたことがわかった。

この研究は、ストロンチウム同位体による分析手法を初期のヒト亜科の化石に応用した最初の例となると言われている。今後、この他の化石化した初期人類への利用が期待される。

Zähne verraten viel über den Lebensradius früher Vorfahren

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