2011/06/17

アイスマンは虫歯で歯周病だった 新石器時代の歯の病理

アイスマンの復元された姿
アイスマンは、1991年にアルプスにあるイタリア・オーストリア国境のエッツ渓谷(海抜3210メートル)の氷河で見つかった、約5300年前の男性のミイラの愛称である。

エッツ渓谷で発見されたことから、「エッツィ」とも呼ばれている。
人体そのものや着衣、道具類の多くが氷漬けになって保存されていたので、当時の文化・風習や病理などを明らかにする上で、アイスマンは最高の資料になっている。

アイスマンの死因については、最初は凍死であると考えられていたが、近年の研究から失血死であることがわかっていた。

このアイスマンの最新の研究成果から、彼が虫歯で、歯が摩耗しており、歯周病で苦しんでいたことがわかった。
カリフォルニア・サンディエゴで行われたミイラの研究の国際学会で発表されている。



過去20年間、人類学、医学による徹底的な調査が行われたが、歯の問題についてはこれまで知られていなかった。

スイス、チューリヒ大学のRoger Seiler氏らは、最新のCTスキャン技術を用いて、ミイラの顔の精査を行った。
「アイスマンは彼が死んだとされる40歳頃に至るまで1つも歯を失っていないが、歯の摩耗が進行しており、重度の虫歯と歯周炎があることがわかった」とSeiler氏らは報じている。

アイスマンのミイラ
とりわけ、上顎の臼歯は歯槽骨が失われており、歯周炎の兆候を表しているのと、2つの歯で物理的損傷の痕跡があった。

Seiler氏らによると、もっとも驚くべきは、虫歯の多さだった。
これらの歯の病理は新石器時代の食物の変化を示しているという。

アイスマンがヒトツブコムギもしくはエンマーコムギなどの穀物を食べていたことはこれまでの調査でもわかっていた。
穀物に含まれる炭水化物は歯の病気を促進させる要因になったと考えられている。

今後、ミイラの胃腸の中にある物の分子レベルでの調査によって、歯の病気を生み出した原因に対する調査を進めていくとのこと。

また一方で、ミイラの虫歯に対するDNA調査も実施される予定だという。
何らかのバクテリアの存在が虫歯を引き起こした可能性を検討するためである。

チューリヒ大学のFrank Rühli氏による研究で、歯の病理の進化史、とりわけ新石器時代への移行期の病理を知る上で、重要な調査になるという。

2 件のコメント:

  1. 歯を磨く、というのは近代的かつ最重要なケアなんですね…

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  2. コメントありがとうございます。
    新石器時代以後、歯磨きはどうしていたんでしょうね。
    炭水化物の摂取が原因で歯の病気が進んだということは、それ以前の狩猟・採集段階では現代のような歯の病気はなかったのか?というところが気にかかります。

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