2011/07/26

考古学・歴史学に新しい「光」を当てる技術 RTI

人がみることができる、そしてカメラで撮ることのできる物体の特徴は、物体の表面にどのように光があたっているかによって見え方が異なってくる。
例えば、外にある岩絵は、まだ日が低い早朝にしか見えず、日が高い正午にはほとんど見えなくなってしまうことがある。
物体に対して当てる光の方向が変わることで、物体の前表面から得られる情報が変わってくるのである。
こうした光の反射に関する情報は、私達を取り巻く世界の形や物体の特徴の多くを語ってくれる。

RTI(Reflectance Transformation Imaging)技術は、この光の反射に関する情報をデジタル撮影によってとらえる手法である。
RTIの有効性は多くの自然科学や文化遺産研究で実証されており、今後の幅広い応用が期待されている。


イギリス・サウスサンプトン大学のECS(エレクトロニクス、コンピュータ・サイエンスElectronics and Computer Science)に所属するKirk Martinez博士は2つのRTI技術を開発した。
この技術によって古文書や考古遺物をより高い精度で記録することができる。
同システムは光源がそれぞれ異なる76枚の写真を撮ることで、RTIの画像を得る。
閲覧者は、取得した被写体の映像の光源を自由に変えることができ、細部をアップすることができる。

「ヒューレット・パッカード研究所が数年前にこの技術を開発し、世界中で散発的ではあるが利用されてきた」とMartinez博士は述べている。
「私達が行ったのは、この技術を、スキャンニングが必要なたくさんの遺物に溢れている博物館のような場所で、毎日利用できるほど早く資料化できる形へ発展させたことだ」

このプロジェクトの過程で、彼の研究チームは100の粘土板文書をスキャンした。
そのほとんどは5000年間に属するものである。

「この技術を利用しないで写真から細部を確認しようとしたら、現在の写真の技術ではほとんど見ることができないだろうし、おそらく再撮影する必要が出てきてしまうだろう」とMartinez博士。

RTI技術があれば、光源を気にせず、離れたところにいる研究者であっても対象となる古文書や遺物の詳細を見ながら研究を進めることができる。
RTI技術で取得した画像を、世界中の研究者と共有することもできる。

この技術は現在オックスフォードのアシューモリアン博物館で使用されており、最近では大英博物館やナショナル・ギャラリーでも運用試験が行われているそうだ。
このシステムのソフトウェアは今秋にはオープン・ソース化され、ウェブ上に公開される予定。

RTI技術に関する動画(英語、YouTube)
Reflectance Transformation Imaging - Throwing light on ancient objects



Technology to Throw New Light On Ancient Artifacts

ラベル「テクノロジー」を含む記事

0 件のコメント:

コメントを投稿