2011/07/10

イラクでの考古遺物の不法取引がテロリストの資金源に

イラク戦争で盗難されたアダド・ニラリ王の石碑
CNNにイラクでの考古遺物の不法取引を調査したMatthew Bogdanos氏の話があった。
興味深い内容なので、以下に原文から日本語訳したものを記載する。

「考古遺物の不法な取引は麻薬や武器の密輸、人身売買と並んで世界的に蔓延しているが、それほど語られることはない。
私は2003年にアメリカ海軍大佐としてイラクの対テロ作戦に従軍した際、ボランティアとしてイラクの国立博物館で遺物の略奪について調べていた。

私の経験から言えるのは、考古遺物の不法取引はこの地域のテロ活動の収益源になっているということだ。

2005年に我々が捕らえた武器の輸送船には、それがテロリストのものであれ反政府グループのものであれ、考古遺物も積まれていた。
トラックや洞窟、建造物、その他の隠れ場所にも携行式ロケット弾とともに古代の石碑や像が入れられた箱が見つかることもあった。


密輸業者やテロリストにとっては、どんな手段で得たものであっても、金は金だ。
我々がその事実を発見した時、情報提供者に対してこれが偶然の発見なのかを確認した。
この習慣がイラクで始まったものかどうかは私にはわからない。
単に、我々が知ったのはその時が初めてだっただけだ。

アフガニスタンと違って、イラクにアヘンはないが遺跡はある。
テロリスト自身は略奪は行わない。略奪は地元の人々によって行われている。
しかし、テロリスト達は、(考古遺物のための)新しいマーケットが存在し、考古遺物に関する放棄の権利を一番に有していることをよくわかっている。

かつてイラクから武器を秘密裡に輸出入するために使用された仕組みが、そのまま考古遺物の密輸にも利用されていることを我々は発見した。

イラクから外の世界に持ち出されるルートを考えると、レバノン経由ということになり、ヒズボラ(レバノンを中心に活動しているイスラム教シーア派の政治組織)がこの流れを資金源と見ていても驚きではない。
我々は、ヒズボラが考古遺物の密輸に対して税をかけていると考え始めている。

略奪行為の大きな問題の1つは、略奪が行われた遺跡が未発見のものであった場合、何が起きたのかさっぱりわからないということだ。
インターポールは考古遺物の不法取引は何十億ドルに上っていると言っている。
私は聞きたい。インターポールはいったいどうやってその額を出したのだろうか?

もし取引が不法なもので、それゆえ秘密裡に行われているものだとしたら、どうやって
その総額を測ることができるのだろうか。
麻薬の取引と一緒で、わかる範囲で総額を推測するしかできないのだ。
それは科学的なアプローチではないし、考古遺物の不法取引の総額を推し量るのも気持ちのいいものではない」

Opinion: Illegal antiquities trade funds terrorism

2003年の戦争開始後、ユネスコによる文化遺産被害の調査が行われている。
2004年に参加した日本の研究者による論文が公開されている(PDF)。

松本健(国士舘大学イラク古代文化研究所)「イラク戦争後の文化遺産の現状とその対応―ユネスコによる専門家派遣から―」AL-RAFIDAN Vol. XXV 2004

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