2011/07/14

人類最古の宗教的儀式の痕跡? ボツワナ・ツォディロ

オスロ大学の准教授Sheila Coulsonは、7万年前のアフリカで人類による儀式の証拠を発見したと伝えられている。
この説が正しければ、人類が何らかの宗教活動を行っていた最古の証拠となる。

Coulson氏は、サン人の起源に関する研究を行っている。
サン人は南部アフリカのンガミランドとして知られるボツワナ北西部にまばらに居住している人々である。
カラハリ砂漠に住み、狩猟採集の生活を営んでいる。

Coulson氏は中期旧石器時代の遺物を求めて、カラハリ砂漠に拡がる小丘陵を調査していた。
この丘陵群はツォディロ・ヒルズと呼ばれ、10キロ四方に4500もの岩絵があることで知られている。
2001年にはボツワナ初の世界遺産に登録された。
ツォディロの岩絵

ツォディロ・ヒルズはサン人にとっては聖なる場所であり、「神々の山」「ささやく岩」と呼ばれている。
ニシキヘビはサン人にとって重要な動物の1つであった。
彼らの創世神話では、人類の祖先はニシキヘビであり、丘陵群の周りの乾燥した川床はニシキヘビが延々と水を求めて丘陵の周りをまわったことによって作られた、とされている。
Coulson氏が発見したのは、このニシキヘビに関連する儀式の場所で、ツォディロ・ヒルズ北部の小さな洞窟にある。
洞窟は奥まったところにあり、アクセスが難しかったため、1990年代まで考古学者には知られていなかった。
Photo Credit: Sheila Coulson

Coulson氏が2007年の夏に洞窟に入った時、巨大なニシキヘビの頭部の形に似た不思議な岩を発見した。
長さ6m、高さ2mほどあり、300から400の人為的なギザギザの模様があった。

「蛇の口や目もあり、実物のニシキヘビのように見える。太陽の光によってギザギザの模様は蛇の皮のようになる。夜は、火のゆらめきによってヘビがあたかも動いているかのようにみえるのだ」

岩の加工が近年のものである証拠はなく、実際岩の大部分は極度に摩耗している。
Coulson氏らはいつごろ岩の加工が行われ、また洞窟が何のために用いられたかを明らかにするために、ヘビ形の岩のちょうど前の位置で試掘のためのピット(穴)発掘を行った。

ピットの底からは、ギザギザ模様をつけるために使われた数多くの石が発見された。
これらの道具のうちいくつかは7万年前に年代づけられるもので、さらに加工の際に岩の壁から落ちた剥離片も発見された。

発掘によってCoulson氏らあh13000点を超える遺物を発見した。
遺物は全て尖頭器と儀式に用いられたと考えられる品々、岩の加工に用いた道具である。
それ以外の遺物は認められなかった。

尖頭器に用いられた石材はツォディロ地域のものもあったが、別の地域のものもあり、何百キロも離れた場所からもたらされていた。
尖頭器は精巧に作られており、当時のこの地域の尖頭器よりもずっとカラフルであった。
驚くべきことに、赤色の尖頭器のみ火を受けていることがわかった。

「旧石器時代の人々がこれらのカラフルな尖頭器を洞窟に持ってきて、岩の加工をその場で行った。赤色の尖頭器のみ火にくべられた。これは道具の儀式的な破壊行為である。居住場所に通常残るような痕跡はここには一切見られない。普通の道具がこの遺跡からは見つからないのだ。この発見は、当時の人間は我々が予想していた以上に組織化され、歴史上のずっと早い段階で抽象的な思考をする能力があったということを意味している。ツォディロは約10万年以上にわたって、特別な場所として人類にしられていたということを示している」とCoulson氏は語っている。

Sheila Coulson氏はまた、ニシキヘビ型の岩の背後にある秘密の部屋にも言及している。
この小さい部屋へと続く入口のいくつかの部分は摩耗によって表面が滑らかになっていることから、長い年月に渡って多くの人々がそこを通ったと推測される。

「シャーマンは現在のサン人の文化でも重要な存在であるが、古代においてシャーマンは秘密の部屋に身を隠していたかもしれない。彼が秘密の部屋から話す時は、ヘビそのものから声が出ているように聞こえただろう」

シャーマンはまた、丘の中腹に通じる小さな穴を通って、いなくなってしまうこともできた。

ツオディロにある大きな洞窟や壁には多くの岩絵が描かれているが、この洞窟には2つの小さな岩絵しかない。ゾウとキリンのものだ。
この絵は、ちょうど壁の水が伝ってくる場所に描かれている。

Coulson氏は、これはサン人の神話によって説明できると考えている。

サン人の神話の一説では、ニシキヘビが水の中に落ちて自分では抜け出すことができなかった。
ニシキヘビはキリンによって水から上がることができた。
ゾウはその長い鼻から、しばしばニシキヘビの象徴とされていた。

「この洞窟には、サン人にとって最も重要な3つの動物、ニシキヘビ、ゾウ、キリンが描かれていた。これは一般的ではなく、この場所が極めて特別な場所であったようである。彼らは尖頭器を偶然燃やすようなことはしなかっただろう。彼らは遠く離れた場所からそれを持ち込み、意図的に火にくべたのである。これは宗教的な儀式活動であることを示している」とCoulson氏は結論付けている。

この遺跡の年代を妥当なものとするには、過去の重要な考古学的発見が不可欠だった。
考古学者Christopher Henshilwoodが、南アフリカのケープタウンの南にあるブロンボス洞窟で中期旧石器時代の居住跡を1990年代に発見していたのである。
ブロンボス洞窟では8万年前の骨角器や7万5千年前の貝殻による装身具が発見されており、人類最古の装身具とされていた。


World's oldest ritual discovered: Python worship 70,000 years ago

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