第2次大戦で消えた北京原人の骨を求めて

中国・北京の近くにある周口店で、1929年に中国の考古学者が頭蓋骨を含む40体の骨を発見した。
骨はホモ・エレクトスのものであることがわかり、「北京原人（ホモ・エレクトス・ペキネンシス）」と呼ばれるようになった。

北京原人の頭蓋骨

近年の研究では77万年前のものと推定されており、これまでに発見された原人の化石群の中で最も多い資料となっている。
現在この周口店は世界遺産にも指定されている。
この北京原人の骨は、第2次世界大戦の時に消失してしまった。

記録によると、1941年に化石の最も重要な部分は木箱につめられ、アメリカ軍によってニューヨークの自然史博物館に運ばれ、保護される予定だった。
しかし、化石はアメリカには到達しなかった。
現在、骨の複製は残っているが、オリジナルは行方不明のままだ。
いったい北京原人はどこへ行ってしまったのか。

南アフリカ・ヨハネスブルグにあるウィットウォーターズランド大学のLee Berger氏らの研究チームが、失われた北京原人の骨に関する新たな手掛かりを見つけた。
以前アメリカ海軍にいたRichard M. Bowen氏によると、1947年、中国の国共内戦時に彼は秦皇島のホルカム駐屯地におり、塹壕を掘っている際に骨でいっぱいになった箱に出くわしたというのだ。彼は驚いて、箱を埋め戻した。
その後すぐに、彼の部隊は秦皇島を撤退することになった。

Bowen氏の話は北京原人の骨の所在に関する最も有力な証拠であったことから、Berger氏らは彼の証言をより詳しく調べる必要があると考えた。
おそらく、1941年に化石の移送をまかされた部隊は、戦争の真っただ中で無事に送り届けることは不可能と考え、後で回収するために骨を埋めたのだろう。

Bowen氏の情報と地元の専門家との協力によって、Bowen氏が骨の木箱を掘り出した兵舎の場所と思われる場所の候補を3か所特定した。
3か所はそれぞれ200m x 200mの範囲がある。
候補の1つは大きな倉庫の下であるが、それ以外は広い駐車場と道路になっているそうだ。

Berger氏らは、この地域の開発の途上で箱が破壊される可能性が高いと述べている。
「この地域は近い将来開発が行われ、大きな建造物が建てられる。この開発では当然、現在道路や倉庫となっている場所を発掘する機会を提供してくれるかもしれない。もし、Bowen氏のいう箱が奇跡的に残っていれば、発掘の過程で発見することができるかもしれない。地元の文化財局がこの地域における発掘を委任されており、Richard Bowen氏が1947年に見た骨を再発見するわずかな希望となっている」

Report from Former U.S. Marine Hints at Whereabouts of Long-Lost Peking Man Fossils


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