2011/10/19

壺に残るDNAの分析から交易品を復元 古代ギリシア

古代ギリシアの船に積まれていた貯蔵用の壺のDNA分析から、古代ギリシア人がワインだけでなく、様々な食料の交易を行っていたことがわかった。
交易に使用された壺(アンフォラ)
地中海にあった沈没船から発見された9つの壺から、野菜、ハーブ、木の実の存在が分析によって検出されたという。
今後、様々な時期の遺物に対してDNA分析を行うことで、地中海域における交易マーケットの展開をより詳細に知ることができるかもしれない、と分析を行った研究者らは述べている。

アメリカ・マサチューセッツ州にあるウッズホール海洋研究所の考古学者Brendan Foley氏とスウェーデン、ルンド大学の遺伝学者Maria Hansson氏は、紀元前5世紀から前3世紀に年代づけられる沈没船から発見された9つのアンフォラ(古代地中海地域で利用された貯蔵用の壺)よりDNAを抽出した。

彼らは9つの内5つからブドウのDNAを発見した。アンフォラはワインを貯蔵したものと考えられていたので、予想通りの結果であった。
また6つの中からはオリーブのDNAが発見された。おそらくこれはオリーブオイルのものと考えられている。
その他には、マメ科の植物、ショウガ、クルミ、ジュニパーやミント、タイム、オレガノなどのハーブがあった。

アンフォラは地中海中にある沈没船から何千体と見つかっている。
中にはオリーブの種や魚の骨など、食べ物の残滓が含まれていることもあるが、大半は空で、中身の表示もない状態で発見される。

Foley氏によると、歴史学者はこれらの容器が主にワインの貯蔵に使用されていたと考えがちだという。
実際に彼の調べによると、査読を受けた27の論文で扱われている5860個体のアンフォラの内、95%は飲料を運んでいたと記述されているという。

この仮定を検証するために、Foley氏とHansson氏はウッズホール海洋研究所に寄贈された1つのアンフォラで分析を行ったが、十分な成果は得られなかった。

そのため彼らはアテネの倉庫に保管されている過去20年以内に発掘されたアンフォラを分析する許可をギリシア政府から取り付けた。
この分析は成功した。壺が暗所に保管され、DNAが太陽光によるダメージを受けていなかったことが成功の一因と考えられている。

それぞれの壺から発見された内容物に見られる多様性から、アンフォラは再利用されることが一般的で、これまで想像されていた以上に複雑な構成を持つ食品が入っていたかもしれないことがわかってきた。
構成とは、例えば、香り付け、もしくは保存のためにハーブを加味するなどである。

地中海交易の専門家でカナダ・ウィニペグにあるマニトバ大学のMark Lawall氏は、壺の利用のされ方について歴史の専門家は結論を急ぎがちだと述べている。
「彼らは十分な考察もなしに、一般的な意見を引用しているだけだ」とLawall氏。
今回の分析の結果は、ワイン、オイル、蜂蜜や果物、魚、肉、樹脂の交易に関するその他の考古学的証拠や文字資料とも合致すると彼は説明している。

研究チームは、キプロスのキレニア沖で発見された紀元前3世紀の船に積まれていたサンプルを分析する計画があるという。
また、Foley氏は、今後時代の異なるアンフォラの分析を行い、古代における交易の発展の様子を明らかにしたいと考えている。

共同で研究を行ったギリシア文化庁の水中考古学セクションの考古学者、Theotokis Theodoulou氏によると、ギリシアには数千に及ぶアンフォラが倉庫に保管されており、今後分析が可能だという。
「20年間倉庫に入れられていたものでも、DNAはまだ壺に残っている」

このアプローチはアンフォラに限った話ではない。
食器や、化粧品、薬が入っていた小瓶などに対しても応用することができる、とFoley氏は述べている。

論文はインターネットから購入可能だ。
Brendan P. Foley, Maria C. Hansson, Dimitris P. Kourkoumelis, Theotokis A. Theodoulou,
"Aspects of Ancient Greek trade re-evaluated with amphora DNA evidence," Journal of Archaologica Science, 2011.

Ancient Greek ships carried more than just wine



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