2011/10/15

アメリカ大陸の発見が小氷河期の原因となった?

クリストファー・コロンブスがアメリカ大陸を発見しなかったら、その後のヨーロッパの気候はもっと温暖だったかもしれない。
中世の後に続く低温期「小氷河期」は、アメリカ大陸の人間活動による植生の変化が原因であるとする研究結果が提出されている。
アメリカ・コロラド州の森
ヨーロッパ人によるアメリカ大陸の征服によって、そこに住んでいた人々を追い払い、利用されていた土地をほったらかしの状態にしてしまった。
これらの場所で再生した木々は何十億トンもの二酸化炭素を大気から取り込み、大気が熱をとらえる許容量を減少させ、気候を冷温化させるに至ったと、スタンフォード大学の地球科学者Richard Nevle氏は述べている。

アメリカでは炭素が大量に集められるに至った大規模な森林再生があって、それがヨーロッパ人の到来と時期的に一致している、とNevle氏はアメリカの地理学会で説明している。

Nevle氏は違う種類の様々な証拠を結びつけることで、これらの再生した木々がどの位の量の炭素を消費したかを推定した。
氏によると、16世紀と17世紀の南極の氷から観察された大気中の二酸化炭素の急激な低下のほとんど、もしくは全てがアメリカ大陸の森林再生が原因と考えられるそうだ。
二酸化炭素は温室効果ガスの主要なもので、その減少は中世の後に続く低温期、いわゆる「小氷河期」をまねく結果となった、ということだ。

15世紀の終り頃、アメリカ大陸には4000万から8000万人の人が住んでいたと考えられている。
その多くは焼畑によって農地を作っており、メキシコやニカラグア、その他の国々でも炭化物の堆積が土壌から発見されている。

500年前、アメリカに元々住んでいた人がいなくなるのと同時に、この炭化物の堆積が突然なくなっている。
ヨーロッパ人が持ち込んだ天然痘、ジフテリアやその他の病気は、最終的に原住民の90%を死に追いやったと言われている。

再生した森林の面積は、カリフォルニア州に相当するとNevle氏は推定している。
これによって、20億から170億トンの二酸化炭素を大気中から吸い上げるに至った。

南極の氷のボーリング・コアには空気の泡があり、この時期に二酸化炭素が減少したことを示している。
「この時期の、世界の他の地域では、観察された急激な二酸化炭素の減少を説明できるような、人間の土地利用に関する出来事は起こっていない」とスイス連邦工科大学ローザンヌ校の地球システム科学者Jed Kaplan氏は述べている。

自然のプロセスもヨーロッパの冷温化に一役買っている。
太陽活動の低下、火山の活発化、もしくは二酸化炭素吸収量の増加をまねく海洋の低温化などである。
これらの現象のほうが、小氷河期における気候の地域的なパターンをよく説明できる、とペンシルヴァニア州立大学の気象学者Michael Mann氏は語っている。

しかし、南極の氷には森林再生による影響を示す別の鍵があるとNevle氏は述べている。
アメリカ大陸に住んでいた人々が減少した時に、大気中の二酸化炭素が重くなっている。
大気を構成する二酸化炭素の分子で、炭素13が多くなっているのだ。
これは、木々の葉が炭素12による二酸化炭素を好んで摂取するので、結果として重い炭素が大気に残ることになったと説明することができる。

Kaplan氏は、炭素同位体の量の測定に不確実な部分があり、この証拠は決定的なものではないと指摘している。
しかし、彼はアメリカ大陸における疫病の流行は、無視できない重大な出来事であるという点では同意している。

産業革命より前の時代であっても、人間の活動は気候を変化させ得るのかもしれない。

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