2011/09/30

呪われた「クロイソスの財宝」 トルコ

「クロイソスの財宝」はリディア王国をクロイソスが統治していた紀元前560年から前547年の遺物のコレクションである。
この財宝は1960年代の発見以後、壮絶な歴史をたどっており、呪われていると噂されるようになった。
財宝はトルコから密輸され、ニューヨークのメトロポリタン美術館で展示されていたが、法的な闘争の末トルコに返還された。
現在、「呪われた」財宝はまた別の論争の的になっており、現在トルコのウサク考古学博物館に展示されているものの、トルコの文化・観光省と博物館側では将来どこに遺物を展示するかで意見が一致していない。

匿名希望の役人の話によれば、ウサク考古学博物館は立地の悪さや財宝に対する知識に欠けていることから、観光客を誘致するのは難しい状態だという。
しかし、文化・観光省の統計によれば、観光客は1995年は4433人であり、トルコに財宝が返還された1996年には10783人に増えている。
財宝をより多くの観光客が期待できる、中央に位置する博物館への移動を希望している文化・観光省側にとっては、ウサク考古学博物館の安定した観光客の数は、逆に厄介なことになっているそうだ。

文化・観光省と博物館側との意見の不一致は、財宝が発見されたウサクの人々の間で広まっている「呪い」のことでも
そして、財宝の所有権が誰にあるのか、という問題についても議論の種になっている。

財宝にまつわる呪いの話は、1965年にさかのぼる。
この年、ウサクの西にあるギュレという村で、5人の村人によって財宝は発見された。
彼らはリディア王国時代の王女の墓を暴いて、副葬品の宝石を盗んでいた。
1966年に村人たちは残りの財宝も盗掘し、金の宝石、銀の壺などで構成される150の遺物を取り出した。
そして1968年にも盗掘が行われ、残っているのは壁画だけという状態だったという。

村人達は財宝を密輸業者に不法に転売したが、その後幸福な人生を送ることができず、数々の不幸に見舞われたという。
そのため、この地域の村人達の間では、財宝が呪われているという噂が出回ったのである。

盗掘した村人たちの一人が分け前のことで口論になり、警察に密告したため、彼らは警察に逮捕された。

その後、警察による捜査によって、イズミルに本拠を置く密売人Ali Bayırlarに辿り着いたが、その時にはすでに財宝は海外のバイヤーに売られてしまっていた。

1970年代には、ボストン・グローブ誌のジャーナリストRobert Taylor氏とボストン博物館のEmily Vermeule氏が、1966年から1968年の間にリディア王国の219点の財宝がニューヨークのメトロポリタン美術館によって購入されたと伝えている。

トルコ人ジャーナリストÖzgen Acar氏は、1985年に美術館を訪れた際、55点のクロイソスの財宝が展示されているのを見て、残りの財宝も博物館に保管されているかどうかを調べるために調査に取り掛かった。
メトロポリタン美術館の展示では、財宝はギリシア由来のものと書かれており、Acar氏とウサク博物館側は実際に発見された場所を隠すための意図だったと主張している。

Acar氏はすぐにトルコ政府に連絡し、政府は1987年に返還するための法的プロセスを開始した。
返還要請がなされたのは、メトロポリタン美術館が財宝の所有者として合法的に認められる3日前だったそうだ。

6年に及ぶ法的闘争の末、美術館側は購入した際それが盗品であると知っていたことを認め、アメリカの連邦裁判所は財宝をトルコへ返還するよう判決を下した。

ところで、盗掘を行った村人達はどうなったのか。
他の村人達が語っているところによると、盗掘を行った1人は、3人の息子の内の1人がのどを切り裂かれて殺されたという。
そして残りの2人の息子は交通事故で命を落とした。その後盗掘を行った人物は体が麻痺してしまい、死んでしまった。

別の1人は息子が自殺し、それをきっかけに離婚してしまった。
最後の1人は発狂してしまい、40バレルに及ぶ金をどうやって隠したかを人々に語ってきかせているという。

密売人のBayırlarも、その後つらい人生を送り、苦痛の内に死んだと伝えられている。

クロイソス王は貨幣制度を考案したことで有名であり、歴史上最初の起業家と言われることもある。
大英博物館所蔵のリディア王国の金貨
貨幣は交換の媒介として使用され、この地域の交易関係を拡大することで、クロイソス王は当時無類の大金持ちになったと言われている。
「大金持ち」の代名詞になっており、裕福な人をさして「クロイソス王のようにリッチな」「クロイソス王よりも裕福な」という英語表現が今でもある。

Curse of Croesus Treasure continues



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