2011/09/03

176万年前の握斧がケニアで発見される 人類の出アフリカとの関連

 ケニアで旧石器時代の握斧などが発見された。
この形態のものでは最古と考えられ、176万年前のものと推定されている。
CREDIT:Pierre-Jean Texier/CNRS
ケニア北西部にあるトゥルカナ湖岸で出土したもの。
一番大きなものでは長さが20cmほどあり、両側面の剥離によって形作られている。
これは当時としては高度な石器製作技術を有していた証拠であり、おそらくはホモ・エレクトゥスがこの技術を有していたと考えられる。
遺跡で行われたトレンチ発掘では、過去に絶滅した種の一部が発見されており、この石器を使用していた人々と絶滅種が同時代に活動していたことがわかっている。
絶滅種にはより初期のカバやサイ、ウマ、アンテロープ(レイヨウ)、ネコ科の巨獣やハイエナなどがあった。

これらの石器は物を壊したり、切ったり、削ったりするために使用されたと考えられており、初期の人類には動物を解体し、肉を剥ぎ取り、栄養価の高い髄を得るために骨を壊していたと推測されている。

研究者らは、石器が発見された土層の年代が、176万年前のものと考えている。
これまでは、この種の石器の最古の例は140万年前と推定されており、エチオピアのコンソという場所で発見されていた。
その他にもインドで発見例があるが、年代はあいまいであり、100万年から150万年前とされている。

より古い、もっと原始的な石器はこれまでにも発見されていた。
初期人類による最も古い石器製作の証拠は、260万年前のものが最も古く、礫の一部を打ち欠いて刃をつけた石器(チョッパー)などが含まれる。
これらは、発見されたタンザニアのオルドヴァイ渓谷の名前からオルドワン石器と呼ばれており、100万年に渡って使われ続けていたと考えられている。

しかし、今回ケニアで発見された石器群は、次の時代の、より進んだ石器製作技術に属している。
フランスの遺跡が標識となったアシュール石器は、より大きく、重く、鋭い刃を持っていて、両側面を打ち欠くことで雫形の形状を呈している。
アシュール石器のハンドアックス(握斧)
多くのアシュール石器はホモ・エレクトゥスの化石化した骨とともに発見されていることから、オルドワン石器の技術を発展させることで、アシュール石器が生まれたと考えられるようになった。

石器はアフリカ大地溝帯のコキセレイ(Kokiselei)という場所から見つかった。
この場所はいくつかの重要な初期人類化石が発見された場所の近くにあり、その中にはトゥルカナ・ボーイと呼ばれている150万年前の少年の骨も含まれている。

この石器の発見から、ホモ・エレクトゥスの世界各地への拡散について1つの重要な疑問が生まれてきた。
コキセレイではオルドワン石器とアシュール石器の両方が発見されているが、180万年前のホモ・エレクトゥスが発見されたグルジアのドマニシ遺跡では、アシュール石器のような進んだ技術を持つ石器はまったく共伴していない。
すなわち、もし定説通りアフリカでホモ・エレクトゥスが生まれ、アジアに移住していったのであれば、なぜこれらの石器製作技術が伝わらなかったのか、という疑問が沸き起こってくるのである。

研究者らによって提示された最も過激な説の1つには、ホモ・エレクトゥスがアフリカではなくアジアで生まれた、というものがある。
もう1つの可能性として、アフリカからアジアに移住したグループが、その過程でアシュール石器の技術を失ってしまったということが考えられている。

The Origin of Our Species(我々の種の起源)」の著者でロンドン自然史博物館のChris Stringer氏は、今回発見された石器が、後のアシュール石器よりもずっと粗雑だと述べている。

「出アフリカについていえば、グルジアのドマニシ遺跡における新しい年代測定では、180万年前よりも古い結果が出ている。したがって、今回発見された両面加工石器の年代よりも、人類のアフリカからの流出の方が古い時期に属するということになる。実際、何人かの研究者は最初の出アフリカがドマニシ遺跡の年代よりも早く、オルドワン石器を製作していた人々によって行われたと考えている」とStringer氏は述べている。

「初期人類の時代では、集団の人口は少なく地域的もしくは広範囲での絶滅が度々あったと考えられ、イノベーションが必ずしも保持され、拡がっていったわけではない。ナイフ形石器や弓矢などは一度発明され、その後発明した個人や集団が知識とともに絶えてしまうことで、何度も繰り返し発明されていたかもしれない」
「そしてコキセレイで発見された石器が、確立されたアシュール石器の最初期のものであるという確証を我々は持てない。両面加工石器は160万年前に幅広く根付いてきているが、それより前に人類は両面加工の技術を試していたことも考えられる」

Hand axes unearthed in Kenya are oldest advanced stone tools ever found


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