2011/09/12

イギリス人の祖先は何者か? DNAによる人の移動の分析

 これまでイギリス人は5000~10000年前に移住してきた農耕民の子孫であると考えられてきた。
しかし、新しい遺伝学の研究では、この説とは異なる成果が提出されている。

イギリス・オックスフォード大学とエジンバラ大学の研究者らによると、ヨーロッパの男性の大半はそれよりもずっと前の段階にヨーロッパに定住していた人々(おそらくは狩猟採集民)と遺伝的なつながりがあるという。
この研究成果はヨーロッパ人男性に共通する遺伝子に基づいており、昨年報告された分析結果を検証する目的があった。
昨年の報告では、イギリス人は近東からの農耕の拡大ととともに西へ移動してきた人々の子孫であるとしていた。

1億人のヨーロッパ人がR-M269と呼ばれる遺伝子を有しており、その中にはイギリス人の4分の3も含まれる。
ヨーロッパにおける人の動きを理解する鍵は、この遺伝子を持つグループがいつヨーロッパに拡散していったか、を明らかにすることである。

オックスフォード大学とエジンバラ大学の研究者らによると、過去の分析で行ったこのグループの遺伝子による年代推定の結果は、極めて多種多様であった。
また、過去に報告していた東から西の分布傾向は、より広範で包括的なデータ・セットからは確認することができなかったとしている。
したがって、農耕民による人口の拡散に関する証拠は見られない、と両大学の研究者らは結論付けている。

オックスフォード大学の遺伝学者でこの研究を主導しているCristian Capelli博士によれば、新しい研究の成果がこれまでのヨーロッパにおける人口の動きに関する議論を「リセット」するものだという。
「我々の研究は、ヨーロッパ人のY染色体が農耕民によってもたらされたとする近年の研究をひっくり返す結果となった」と博士は述べている。

共同研究者でエジンバラ大学Jim Wilson博士は、この研究によって遺伝子の分析が年代推定の正確さに大きな影響を与えた初めての例になる、と付け加えている。
「祖先の系統が発生した時期を推定することは、遺伝学の興味深い応用分野だが、正確な年代を得ることが非常に難しい。多くの人は遺伝子に関する資料が増えれば年代もより正確になると考えているようだが、そうではない。遺伝子にある種の目印があることの方が、より年代推定には最も適しているのだ」

この研究ではまた、ヨーロッパの各地で共通するR-M269の下位グループ群が、各地で拡散していく様子も報告されている。

Gene study sheds new light on origins of British men



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